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「お父様おはようございます!」
「おはよう……ハル」
「ブッブー!」
「あーッ!!」

仁王はその場にしゃがみこむ。寝癖のついた父親の頭をかき乱し、息子は手をつき出した。

「約束!」
「くっそ……」

その手に百円玉を押し付けて、喜ぶ彼を押し返す。かーちゃん俺の勝ちー!両手を挙げて母親に駆け寄ったフミはその百円玉を差し出した。情けねー父親だな、仁王を馬鹿にしながら息子を撫でて、ブン太は小銭を貯金箱に落とす。

「もうゲーム買える?」
「まだだな。ホレ飯食っちまえ、ハル起こしてくるから」
「はーい!」
「マサもー、飯!」
「もー嫌じゃ……ブン太どこで見分けるん?」
「お前似がハル、俺似がフミ」
「適当じゃな」

仁王は溜息をついて食卓へ向かった。双子を授かって5年、小学校へ上がった息子たちは年々生意気になっていく。完全に母親サイドの双子と張り合うのも疲れてきた。最近ではゲームがほしいとねだり出し、教育に関しては厳しいブン太ママのお達しにより毎朝の『双子当てゲーム』が始まった。仁王が見分けられなかったら百円、ゲーム貯金として没収される。

「とーちゃんもいい加減息子間違えるなよなー」
「ふたり並んでりゃわかるんじゃ」
「かーちゃんはわかってくれるもん」
「……よー考えたらお前らに嘘つかれても俺わからんのじゃけど」
「それは俺が見てる」

首にしがみつくハルを抱いたままブン太が戻ってきて、寝ぼけている息子を椅子に座らせた。フミがかいがいしく牛乳を入れてやる。

「あー、とーちゃんおはよう」
「おはようハル。……並べばわかるんじゃ」
「オラ早く食え!誰が片付けると思ってんだ!」
「いって」

仁王の頭をはたき、ブン太は洗濯物を干しにベランダへ出て行く。頭は3つあるのに何で俺、乱暴者の妻に朝から泣きたくなって仁王は頭を抱えた。

「とーちゃんも大変だな」
「ちゃんと愛されてんの?」
「……お前らが出てくるまではちゃんと愛されとったわい」
「うっそだー、ジャッカルが愛されてなかったってゆってたもん」
「あのハゲ、いらんこと吹き込みやがって……」
「あ、ねえジャッカルが来るのって明日だよね」
「明日?ああ、明日じゃな。切原も来るって言ってたぜよ」
「赤也ー!?マジ!」
「やった!」
「……お前らとーちゃんより赤也の方が好きじゃろ」
「「うん!」」
「……ほーか」

息子たちのユニゾンに顔を覆う。知っていた。知ってはいたが、ブン太の言う情けないという言葉が身に沁みる。

「一番はかーちゃん!」
「かーちゃん大好き!」
「おーおー、朝っぱらからなんだ。俺も愛してるからさっさと食っちゃってくれ」
「ごちそうさま!」

フミにワンテンポ遅れて、ハルもご馳走様と手を合わせる。父親の真似されちゃたまんねえからなとしつけだけは徹底したブン太の教育は立派なもので、ちゃんと食器をシンクへ持っていくことまでは自分でする。もう少し大きくなれば皿洗いまでさせるつもりだと言っていた。

冷めたトーストにかじりつき、今日は何を着るかと話し合っている双子を見送る。いいのか悪いのか、仁王の性格もきっちりとその遺伝子に組み込んだ双子は悪戯に余念がない。一度参観日に行ったとき、クラスの違う双子を見てきたブン太があいつら入れ替わってやがった、と帰ってから説教していたことがある。中学時代の仁王の話はするな、とブン太がジャッカルたちに言い聞かせているから、子どもたちは知らないはずなのに末恐ろしい。
基本的に仁王が怒ったことはないので大抵の悪戯に関してはブン太が説教をするが、そのときだけ甘えてくる子どもたちが実はかわいいと思っているので、やめればいいと言ったことはなかった。土日に休めるという仕事ではないためあまり遊んでやることのない仁王の代わりに、まだ付き合いの続いているジャッカルや切原が時々遊びに来る。怒ってばかりの母親の息抜きという意味合いもあるらしい。

「あれ、お前何のんびりしてんだよ」
「今日は休みじゃ」
「あ、そうか。何だよ、朝から起きてくるから仕事だと思ったぜぃ。用事でもあんの?」
「いや」
「……あー」

にやり、と笑うブン太に苦笑してみせる。これから二度寝としゃれ込むつもりだ。長い付き合いのせいですべて見透かされてしまいやりにくい。コーヒーをすすって目の前を駆け抜けるぴかぴかのランドセルを送り出す。

「「いってきまーす!」」
「行ってらっしゃい」
「気をつけろよー!」

両親の声が届いたかどうかわからない。まだまだ学校が楽しい年頃なのだろう。先日ドッヂボールなんて懐かしい単語を聞いて笑ってしまった。思えば夏休みは何もしてやれなかったなと思う。明日はジャッカルが遊園地に連れて行ってやると言っていたか。あいつも物好きだと思う。いいやつなのに優しすぎるせいか、どうも相手が見つからないようだ。双子が可愛くてしょうがないらしく、どっちが父親だかわからない。いや、ポジション的には田舎のおじいちゃんだろう。切原は切原で、いまだに学生時代の恋愛を引きずっている節がある。つまり、ブン太への思いを。揉める度にいつ離婚するんすか、と聞いてくる。
息子たちに倣って食べ終えた食器をシンクへ運び、カップひとつを手にソファーに移動した。手持ち無沙汰に新聞を広げているとブン太が隣に座って一緒に覗き込んでくる。

「優しいお父さんですこと」
「……嫌味か」
「まっさか。……お前時々わざと間違えてやってるだろ?」
「……フミのときは時々わかるんじゃ」
「なんだそれ」
「なっさけない顔のときはフミのことが多いじゃろ」
「あー、まあな。何で双子なのに微妙に上下関係なんだろうな、あいつら」

ブン太が肩に寄りかかってくる。視線を送ると視線だけが返ってきた。しばらく無言で見つめあい、そのうちブン太の手がカップを奪って机に置く。洗濯物を干したせいか、冷たくなったその手を取った。

「いつもすまんの」
「いーえー、稼いでもらってますから」
「あー、そっち」
「頑張ってゲーム代稼いでやれよー」
「もう結構たまっとろう?」
「……俺は双子よりもお前の方が心配なんですけどねー。欲しいんだろ」
「……バレた?」
「お前のどこにゲームする暇があるんだよ。そんな暇があったら寝ろ。もしくは妻をいたわれ」
「……」

改めて見つめ合い、仕方ないなとでも言いたげにゆっくりとキスを交わす。こんな時間が持てるのは久しぶりだ。確かに忙しいというのはあるが、自分で忙しくしている部分もある。学生のころの不真面目さが嘘のように、今は仕事が楽しい。学生のころを知っているからこそブン太は何も言わなかった。手伝うといった子育てにもろくに手を貸さず、家にもあまりいない仁王に文句ひとつ言わない。誘われるままに舌を絡めてぴちゃりと音を立てる。
――体を休めろといわれて上司に押し付けられた休み。どうせなら休日にくれればいいものをと思っていたが、これはこれでよかったのかもしれない。思えばずいぶん長いことご無沙汰だ。子どもたちがもっと幼いころは眠ってしまえばなかなか起きないような彼らであったからそういうこともあったが、寝室を分けたとは言え最近は難しい。まだ若干おねしょの癖が残っていて、夜中にブン太を探しにくるのも一因だ。

「はぁっ……」
「……エロい顔。こればっかりは俺の特権じゃの」
「たりめーだ、ガキに見せてたまるか」
「デートでもする?」
「……いや、家でいい」

ブン太の頭をよぎったのは洗い物や快晴とは言いがたい天気のことだろう。すっかり主婦になったブン太を笑って、抱きしめてまた口付ける。――色々あったが、結婚してよかったと思う。一緒に生活していなければこんな時間も取れないだろう。若くねえのに、朝っぱらから、自分でつぶやきながらも立ち上がるブン太の背を押して寝室へ急かす。ちらりと台所を見たが、後で洗っちゃるから、と言い聞かせて部屋に押し込んだ。
ベッドに座ってキスからやり直す。脱がしてくるブン太の手が急いていた。少しほったらかしにしすぎたなと思う。元々自分もブン太もセックスは好きだ。焦らす余裕もきっとない。シャツを脱がせてベッドに倒し、乱れた髪の間から挑発的な視線が飛んできて笑い返した。嫌な顔しやがって、ブン太がつぶやくのを無視してジャージに手をかけ、下着ごと脱がしてしまう。カーテンを閉めたとはいえ朝の太陽は遠慮なく部屋に差し込み、よく見てやろうとするとブン太の手が仁王の目を塞いだ。そうかと思えばアイマスクをつけられてしまう。

「ブン太」
「俺がしてやるから善がってろよ」

ああ、全く――こんなところは学生時代と変わらない。このプライドの高さに惚れたのだから仕方ないのかもしれないが。

「んじゃお手並み拝見といきましょうか?たっぷりご奉仕してな」
「変態」

 

 

*

 

 

「たっだいまー」
「かーちゃんただいまー」

おかえり、と台所からブン太が顔を出した。同時に指を唇に当て、静かに、のジェスチャーをされて双子は顔を見合わせて首をかしげる。しかし奥の部屋から馬鹿野郎、と怒鳴る声が聞こえてきて、ふたりは跳ね上がって母親にすがりついた。父親の部屋の開いたドアから、携帯を片手に片手に険しい顔をしている仁王が見える。双子の頭を撫でてブン太は台所に向かい、ついていくと机にドーナツがあった。つまりしばらく大人しくしてろ、ということだろう。なんでとーちゃんいるの、小声で聞くハルにブン太が苦笑する。

「休みだったんだよ」
「……じゃあ遊んでくれればいいのに」
「お前ら学校だろうが。夜どっか食いに行くかって言ってたんだけど、ありゃ無理だな」

再び怒鳴り声が飛んできて、ふたりは泣きそうになって手を取り合う。怒っている父親は見たことがない。自分たちが悪いことをして怒るのは母親だし、悪戯を仕掛けても父親は笑うだけだ。ジュースを二人の前に並べて、ブン太は仁王の元へ向かう。鋭い仁王の声にどきどきしながら、ふたりはようやく椅子に座った。ブン太がなだめたせいか、声は少し抑えられる。
そのうちブン太が戻ってきて、とーちゃん送ってくるから留守番してろ、と留守番のときの約束を復唱した。火は触らない、鍵は開けない、二段ベッドで遊ばない、ベランダに出ない。その後ろを眉間にしわを寄せた仁王がスーツを手に、ネクタイを締めながら通った。見たことのないピリピリとした様子に、自分たちが怒られているような気がして緊張する。切原が時々言う、お前らのとーちゃんは怒らせると怖い、と言うのを今身をもって実感した。車のキーをとって母親も出て行き、それからふたりはやっと体の力を抜く。

「……とーちゃんこっえー」
「かーちゃんより怖い」
「いっつもあんなにかーちゃんに怒られてるのに」

ドーナツに手を伸ばすハルの隣でフミが何か考え込んでいて、どうした?と顔を覗き込む。ためらいながらフミはジュースを一口飲んで口を開いた。

「でも俺、とーちゃんがかーちゃん泣かせてるの見たことある」
「いつ?」
「ずっと前、おねしょしちゃって起きたとき、テレビの部屋でけんかしてた」
「何で黙ってたんだよ」
「……だって、俺も怒られたらやだもん」

口を尖らせるフミを見て、ハルも同じような顔をする。そのうち手にしたドーナツを口に押し込み、二つ目に手を出した。大人にしかわからないことがある、ということはわかっている。子どもが口を挟んでいいことじゃない。それでも。

「……うち、りこんするのかな」
「りこんって?」
「結婚やめちゃうこと」
「えっ!なんで!?」
「だってけんかばっかりしてるし、とーちゃんも俺らと遊んでくれないじゃん」
「でも、そしたらハルちゃんと俺はどうなるの?」
「わかんねーよ。でもりこんしたらとーちゃんになってやるって、赤也が言ってた」
「……なにそれ。赤也はとーちゃんじゃないよ?」
「俺だってわかんねー」

ふくれっつらのフミを見てハルは溜息をつく。同じ顔、同じ頭で悩んでみても、同じ答えしか出ない。そう言っている間にブン太が帰ってくる。どきどきする心臓を落ち着かせて、双子はお帰り、と声をかけた。

「ゴメンなー、ビビったろ」
「とーちゃん休みじゃなくなったの?」
「そう。大変だなあとーちゃんはよ。晩飯何にすっかなあ、買い物行ってねーし食いに行ってもいーんだけど、とーちゃん抜きで」
「……とーちゃん遅いの?」
「多分な。あの様子だと帰ってくるかどうかもわかんねーし。まあいっか、今日は有り合わせで。お前ら明日ジャッカルにいいもん食わせてもらって来い。俺も明日行こっかな、とーちゃん仲間外れで!」
「えっ!」
「……何だよ」
「……かーちゃん、とーちゃん嫌いなの?」
「ハルちゃん!」
「えーっと……なんでそんなことになってんのか知らねえが……」

困った表情で頭をかくブン太の首筋に歯形を見つけ、ハルは思わず立ち上がった。よく見れば目元も赤い。

「かーちゃん泣いたのっ!?」
「えっ」
「とーちゃんがいじめたんだ!」

しまった、とブン太が首を隠したがもう遅い。とーちゃんがかーちゃんいじめた!興奮して足を踏み鳴らすハルの背を軽く叩いてなだめ、泣きそうになっているフミを撫でる。あーめんどくせえ、笑顔をつくろいながらブン太は溜息を隠した。やっぱりあいつがいるとろくなことにならねえ。まだ疲労の残る体でハルを膝に抱き上げ、フミの隣に座った。昔幼い弟たちの世話をしていたころを思い出す。

「大丈夫だよ。とーちゃんはかーちゃんのこと好きだから」
「かーちゃんは?」
「かーちゃんも!お前らのことだって大好きだよ。だから大丈夫」
「ほんと?りこんしない?」
「ぶっ!?誰がそんな……あー、赤也か……離婚なんかしない!赤也は俺が明日怒っとくから」
「……かーちゃん」
「……ハイハイ」

フミの視線に、ハルを片足に移すと空いた方にフミが上ってくる。いい加減成長してきてふたり同時に抱くのは重いのだが、今日までは許してやろうと頭を撫でる。少々抱き癖をつけすぎた。甘やかしてきたつもりはないが、無意識のうちに仁王のいない物足りなさを子どもたちで埋めていた節があるのも事実だ。

「明日かーちゃんも一緒に行こうぜ!」
「お、混ぜてくれんの?」
「うん!ジャッカルもいいって言ってくれるよ!」
「……フミはいらんとこ俺に似たな。よし、飯の準備するから降りな。何がいい?」
「ハンバーグ!」
「カレー!」
「すぶた!」
「渋いのきたな」
「からあげ!」
「オムライス!」
「よしっ、オムライス!」

腕まくりをしたブン太の周りで双子が歓声を上げる。卵はあったはずだ。仁王も夕食はいいと言っていたから、あとはスープでも添えれば十分だろう。――あんな表情を久しぶりに見た。ひょっとしたら最後に見たのは高校の頃かもしれない。あの頃テニスが全てだったように、今それだけ真剣に仕事をしているのだろう。せっかくの休日だったのに結局休めていないようなものであったし、心配ではある。
冷凍庫のご飯を見ながら、遊びに行ってくる、と飛び出した双子を見送る。いつも言い出すのはハルの方だ。フミの方が少し大人しい。それにしても切原とは一度話し合わなくてはならない。子ども相手になんて話をしているのだろう。子どもたちは大人が思っているよりずっと敏感だ。あの小さな頭の中に世界中の色々なものを詰め込みながら、まっすぐ生きている。

(――つうか、スッキリした……俺そんなに溜まってたのかな)

久しぶりにすると本当に余裕がなくなる。元々性欲は仁王の方が強いが、今日はブン太の方が追い詰められていた。そこでふとひっかかる。思わず指折り数えてみても期間は開いている。その間キスさえ満足にしていない。ふと頭をよぎったのは、結婚前の浮気疑惑。結婚してからは仕事も忙しくなったこともあり、落ち着いている。酒に弱い仁王は若いときは上司の勧めを断れないで色々あったのだが、今ではそんなこともない。今日のあの余裕はなんだったのだろう。

 

 

*

 

 

「あきたんじゃねーの?」

メリーゴーランドに乗り込むわが子に振った手でそのままジャッカルの頭を叩く。かーちゃん!と誰よりも大きな声で叫ぶハルの後ろで頬を腫らせた切原が膨れっ面をしていた。

「お前そーやって乱暴だし!」
「残念ながら殴ってる時間もねーんだよ」
「そんなに勘繰らなくても、疲れてるだけじゃねーの。遊園地で何つー話振るんだよ」
「うーん……今度幸村くんに相談しよう」
「ハイハイ便りにならなくてすいません」
「つーかお前は彼女も作らないでガキに付き合ってていいわけ?」
「その手の嫌味なら聞き飽きた」

メリーゴーランドから降りてきたハルがジャッカルに飛びついて、彼をそのまま抱き上げる。切原に手を引かれて戻ってきたフミも満面の笑みだ。ふたりとも一晩寝ると昨日のことは落ち着いたらしいので安心する。まだ不満気な切原がうっとうしい程度だ。

「次何乗るんだー?」
「ジェットコースター!」
「お前らまだ身長足りねーよ」
「これは?120からだって」
「あ〜……微妙、フミはあるんだけど」
「俺も乗りたいー!」
「お兄さんに聞いて来い」

親が言うより早いだろう。スタッフを指差すとハルがフミを引っ張って走っていき、ダメだと言われたのだろう、泣き出したのを慌ててジャッカルが迎えに行く。スタッフが驚きを隠せなかったのに切原が吹き出した。しかめっ面で戻ってきたが、抱き上げたハルが耳元で泣いているのは関係ないだろう。

「今日やっぱり俺と赤也いてよかったな」
「二度と職質受けてたまるか」
「ハルちゃん泣かないで」
「ったく……あっほらハル!ポップコーン!」
「いるっ」
「泣くかどっちかにしろ」
「……泣きやむ」
「よし」

ブン太に降ろせと言われてジャッカルはハルを降ろした。フミがその頭を撫でてやり、ハルは涙を拭う。

「この辺はお前に敵わないんだよな」
「たりめーだ、死にそうになりながら生んだんだぜぃ。ポップコーン買ってやって」
「……俺かよ」
「いーじゃん、彼女もいねえんだから金の使い道もねえだろ」
「赤也もじゃねえか」

いいけどよ、双子を連れて行くジャッカルを目で追って、ブン太はそばのベンチに腰を下ろした。切原がじっと見下ろしてくる。

「何」
「……俺ほんとに待っててもムダなんすか」
「ムダ。何のためにお前とガキ遊ばせてると思ってんだ、父親にする気ねえからだよ」
「……でも俺見たんすよ、仁王先輩が女とラブホ入って行くの」
「……赤也クン、仁王センパイの仕事知ってっか?」
「はい?」
「建築デザイン。あいつホテルも幾つか作ってんだぜ。今更そんなネタで疑えねえよ」
「だって俺は、丸井先輩がいい」
「ガキの前で言ったら殺すぜ」
「何であんな人なんすか」
「あんな奴だって、俺が好きなんだからしょうがねえだろ」

 

 

 

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