※生徒×教師片思いパラレル暴力描写あり

 

「何してんだよ!」

右手を強引に引かれて輪の中から引っ張り出された。そのままの勢いで走らされる。あっけにとられた男たちもすぐさま反応し、怒声を上げながら追いかけてきたが手を引く背中は迷わず駅に走った。もう終電も間際だというのにまだ制服姿の学生や帰宅途中の会社員を横目に見ながら、迷路のような駅の中を駆け抜ける。さっきまで仁王を取り囲んでいた男たちも追いかけてきてはいるが目立ちたくはないのか、派手に怒鳴ったりはしていない。
掴まれた腕が痛くて振り払ったがすぐににらまれ、立ち止まったのは一瞬だけで再び手首を取られて走り出す。地下にもぐったりクローズしていく店舗のゴミ袋を飛び越えたりしながら、繁華街を抜けて住宅街の方へ抜けたときにはもう後ろには誰もいなかった。そこでようやく仁王の前を走っていた背中は足を止める。仁王の手は離さないまま、荒い息を整えるのに肩を上下させながらまた歩き出す。

「お前マジ勘弁してくんね?こんなに走ったの何年ぶりだろ」
「……丸井」
「ったく、お前目立つんだから気ィつけろよ」

お前に言われたくない。赤い髪をさしてそう言おうとしたが、一緒に全力疾走させられた仁王も口の中の乾いた不快感に喋るのをやめる。手を引かれるままについていくと夜中の公園にたどり着いた。こんなところに公園があったとは知らなかった。向こうにあるマンションは見覚えがあるから家の近くのはずなのに。
体が熱い。しかしそれ以上に掴まれた手首が熱かった。強い力のせいじゃないことはわかっている。初めて触れた、この男の熱に興奮している。足元からぞくぞくと上ってくる鳥肌がおさまらない。あっちぃ、と仁王の手を離してジャケットを脱ぎ捨てた背中には汗が浮いていて、頭を振ったときに見えたうなじに劣情をもよおす。自動販売機を見つけた男はそちらに向かい、水を買ってのどに流し込んだ。お前は、とようやくこっちを振り返り、飲みかけのペットボトルを差し出してくる。

「……あんなとこで何しとったん?補導されてもしらんよ」
「あのなあ、補導されてんのはお前だよ!童顔ばかにすんな!」
「丸井」
「『先生』、だ。頼むから変なことに巻き込まれんなよ、妙なやつらに絡まれやがって。とりあえず今日は送っていくから、生徒指導は明日な」
「……なあセンセ」
「なんだよ」
「見て」

ずっと左手に握ったままだったものを丸井に突き出した。大きな目を丸くして、その手からペットボトルが落ちる。鈍い音を立てて地面に倒れ、とくとくと水をこぼす音がはっきりと聞こえるほど静かだった。
――黒光りする拳銃。まるでおもちゃのように手に馴染む。イメージだけで触って、リボルバーにふたつの銃弾が入っていることに思わず笑った。ふたり分だ。

「なっ……何持ってんだよ!」
「あいつらから取った。多分やくざじゃろ」
「おまッ……ばか!とりあえずこっち寄越せ、落ちてたとか適当に言って警察に」

引き金に指を添えて丸井に向ける。汗の浮いた額、薄く開いて止まった唇、丸井を制御できるとわかった凶器に満足する。欲しいものを手に入れることのできる道具を手に入れて、使わないばかではない。笑い声を漏らすと丸井が眉をひそめた。いつまでも、関係が変わらないと思ったら大間違いだ。

「センセ、ひとりで帰るの怖いけん、うちまで送って」
「――仁王、それ渡せ」
「俺とセンセ、どっちが死ぬ方がいい?」
「……お前、何考えてんだ?」
「行こうぜ」

左手を下ろし、今度は仁王が丸井の手を捕まえる。顔を寄せると汗の匂いがした。顔をしかめた丸井に笑いかけて見せ、歩き出す。こんなに愉快な気持ちになったことはない。冷たい武器を掴む左手と熱い命を手に入れた右手、こんなに満たされたこともない。

「なあ、丸井センセも夜遊びしとったん?」
「……ちげえよ、うちの学校の生徒がうろついてるって通報あったから駆り出されたんだ。制服って言ってたから多分お前じゃねえけど」
「ふーん、ああ、でも何人か見かけたぜよ。丸井センセってそんな仕事もしとんの」
「そうだよ、大変なんだよ教師は。……それ、貸せよ」
「丸井センセは何くれんの?」
「は?」
「何かと交換するなら、あげる」

仁王が笑いかけても丸井は嫌な顔しかしなかった。身の危険を感じているのか、仁王が撃つはずがないとたかをくくっているのか。どちらでも構わない。丸井を引っ張ってマンションに帰ってくる。鍵を開けるときだけ丸井の手を離したが逃げることはなかった。正義感の強い性格なのはよく知っている。入って、銃口を向けると浮かない顔のまま中へ入った。玄関でぐずぐずするので背中に銃を押しつけてやると仕方なく中へ入っていく。明かりの落ちた部屋を手探りで進み、リビングの電気をつけて丸井を呼んだ。

「……お前、ひとりなの?」
「そう。可哀想じゃろ?あのババァ、もう半年ぐらい顔見とらんな」
「なんで……」
「センセーには関係ないことぜよ。な、センセ」

銃を手に振り返る。

「脱いで」
「……は?」
「俺とセックスしよう」
「お……お前、何言ってんだよ」
「簡単じゃろ?俺死体を抱く趣味はないんじゃ、センセーお願い」

リアクションに困る丸井を笑う。ずっと、この男を抱きたいと思い続けてきた。恋愛感情とは違う、もっと汚い、単純に抱きたいというだけの思いはもはや限界に来ている。このおもちゃのおかげで随分とスムーズにことが進むが、それがなくともそろそろ強引に押し倒していただろう。担任になったこともない教師と関わりがあったのは仁王がいわゆる問題児で、丸井が生徒指導を担当していたからだ。いつからだろう、強気な瞳や決して屈さない態度を取り払い、犯してやりたいと思い始めたのは。がむしゃらに女を抱いても手に入れられなかった満足感を想像する。

「……済めば、それを渡すと約束しろ」
「……ええよ」

教師はみんなばかだと思っているが、丸井は輪をかけてばかだと思う。信じればいいわけじゃない。生徒を信じるだなんて美談は仁王には通用しないのだと、ちょっと考えればわかりそうなものなのに。
すでに興奮で熱い体を見せつけてベルトを外し、銃で促して自分の前に座らせる。くわえて、仁王の命令に丸井は逆らわなかった。覚悟を決めたように手を添えて、赤い舌が先端に触れ、そのまま咥内に導かれて一気に熱が集まった。熱く柔らかい舌は思いがけず積極的に動き、確実に仁王を高めていく。

「ッ……センセ、ばかな女子にフェラ教えたらええのに。慣れとんの?男と経験あるんじゃな」
「……なんだよ、お前でも他人に興味持つんだな。イイコにしてたら俺の話も聞かせてやるよ」
「黙ってしゃぶれよ」

こめかみに銃口を押しつけると一度口を閉じ、再び仁王のものをくわえた。体中の血がめぐり、育った欲望は丸井の口でいっぱいになっている。前髪をかきあげて見下ろすがこっちを見る気はないらしい。そのまま頭を掴み、強引にのどの奥に押し込む。強張った体を笑い、頭を抱えて揺らしてやると苦しそうに声を漏らした。歪んだ眉、乱れた呼吸。俺は、おもちゃを手に入れた。

「んッ……!?」

ぐいと更に叩きつけ、一気に精を吐き出した。それから逃れようと丸井が体を引いたせいで暴れる雄は口の中から飛び出し、出し切らなかった精は丸井の顔を汚す。舌打ちをしてむせ返る丸井の頭をグリップで殴るとよろけてそばに手をついた。うなだれた頭に再び凶器を向ける。

「飲んで。こぼしたのも」
「……楽しいか?」
「楽しいかって?楽しいよ。ひどい姿じゃね、丸井センセ。ほら早く」

銃口で押すと手で顔を拭い、仁王の精液を舐め取っていく。なんと無様な姿なのか、いつものあの健全な笑顔もなくなった丸井はもはや教師ではない。こみ上げる笑いに忠実に表情を歪め、声を漏らすと丸井がこっちを見上げた。瞳だけは変わらない。まっすぐ仁王を見つめるその目は、仁王を責めてはいなかった。どこまでもおめでたい男だ。そんなに熱血だとは知らなかったが、あまり頑固なのも興ざめだ。もう一度軽く殴ってやり、あごで先を促す。

「脱げよ」
「……お前、何がしたいんだよ」
「セックス」
「……こんなセックスが、か?」
「……何?愛のあるセックスをお望みか?笑わせる。はよう」

胸を蹴ってそのまま押し倒し、踏みつけたまま見下ろすと溜息をついた。どこまでも大人ぶるつもりか。笑みを消して足に力をこめると、丸井はゆっくりベルトを外していく。腰を浮かせてズボンを引き抜き、途中でやめさせて自分で脱がす。下半身だけ裸にした姿が滑稽で、四つん這いにさせると更に笑えてくる。丸井の性器はだらりと垂れていて、丸い尻を叩いてやった。

「なんか、こーいうアニメあったな。知っとお?」

肛門に銃口を押しつける。見えていなかったせいなのか、ひっと漏らした息に興奮した。さっき吐精したばかりの性器がまたかたくなるのがわかる。ぐいと更に押してやると床についた手をかたく握った。殺せる。いつでも。

「肛門から撃たれて、弾が頭から出てくんの。貫通するかな」
「ッ……」
「そいつは死んで、いっぺん生き返っとった。センセーも死んだら、生き返る?遣り残したこと、ある?」
「……あるよ」
「何?」
「お前をぶん殴れなかったことだ」
「……殴りたい?」
「殴りたい」
「憎い?」
「ああ。殺してやりてえよ」
「あとで殺してあげる」

丸井の唾液と先走りで濡れたものを銃の代わりに尻に押しつけた。入る気がしなかったが肉を両手で広げてそのまま腰を進める。痛いのは丸井だけではなかったが、開けたままの口からよだれを垂らして小さな悲鳴を上げる丸井を見ているとどうでもよくなる。無理やり奥まで押し込み、穴の収縮に合わせて震える肩を床に押さえつけた。尻だけを高く上げさせると切れているのが見える。傷に爪を立ててやると丸井からうめき声が聞こえて、気分をよくして腰を動かした。だんだんとすべりはよくなる。

「ねえセンセ、初めてじゃないんじゃろ?教えてよ。丸井センセーはどこが気持ちいい?」
「あっ……ぐっ、ッん」
「……ちょっとは気持ちええんかな、立ってきた。変態やねセンセ、尻に突っ込まれてチンコ立てて。触ってほしい?」
「い……いてぇよばか!」
「痛いの好きなん?変態さんじゃねえ」
「んあっ!あっ、は……あ……」
「はぁ……痛そう」

がむしゃらに中を突いて、ときどき気持ちよさそうな声を上げるくせにずっとしかめっ面だ。ほんとに尻から銃弾撃ち込んでやろうか、気持ちいいのだろうか。ひくひくと仁王を締めつけてくる柔らかい体内は熱く、思考まで溶かしていく。あのうるさい教師が、黙っていうことを聞いているのがおかしかった。そのうち丸井も腰を揺らしているのに気づいて、奥まで熱を押し込んだ。

「出すよ」
「やめろッ!」

抵抗に意味はない。ひどい虚しさを感じながら、二度目の射精をした。全部吐き出すまで丸井の腰を押さえつけて中を擦る。丸井に覆いかぶさったまま荒い息を吐き出し、汗をかいた背中に額を押しつけた。まだ治まりそうもない情欲に身を任せて体を揺らすと丸井が一際高い声を上げる。

「……なんそれ」
「やめろ、マジ……」
「……ここ?」
「あっ!やめっ、あんっ!」
「あんって」

勝利に似たものを感じて笑う。丸井の反応を見ながら何度も内部を探ると体の力は更に抜けていき、だらしなく声が漏れ続ける。さっきまで反応の薄かった丸井の性器も立ち上がり、銃を握った手で触れてやるとぐんとかたさを増す。教師だってしょせんただの人間で、結局は雄でしかないのだと思うとおかしかった。どんな態度でいたって、裸にしてしまえばみんな同じだ。

「仁王ッ!」
「はッ……」

結局こいつもただの猿だ。

 

 

*

 

 

目が覚めるともう昼だった。丸井の姿はない。体はひどくだるかった。がむしゃらに走らされたせいか、睡魔に負けるまで丸井の体をいたぶり続けたせいなのかはわからない。フローリングに転がって、左手に握ったままだった凶器を見える。――いつ使おうか。思っていたよりもずっと軽い銃を引き寄せて目の前に持ってくる。たまたま男たちが持っているのを見てしまい、その瞬間にあれだ、と確信したのだ。これがあれば丸井をどうにでもすることができると思った。そしてそれは謀もせずに実現し、あまりにも簡単に進行したのであっけないほどだ。
丸井の熱い体を思い出す。あれは教師でもなく、人でもなかった。仁王の手の中で踊った小さな存在でしかない。立ち上がって簡単にシャワーを浴び、制服に着替える。ベルトに銃を差し込んですそを出したカッターシャツで隠し、学校へ向かった。どうせ丸井は学校だろう。まだ終わりじゃない。終わるはずがない。

近所の団地で自転車を調達して学校に向かう。はっきりと名前があるから、どこぞに放置しておけば持ち主の元へ帰るだろう。その前に誰かが取っていかなければ、の話だが。鍵もつけずにいるのが悪いのだ。自分の持ち物の管理ができないのは自分の責任でしかない。
季節は変わったのにときどき夏の名残のように暑くなる。今日も自転車で走っていると汗が風で冷やされて気持ちいいほどだった。だるかった体は少しずつ楽になっていく。裏門から学校の敷地に入っていき、丸井の車を見つけてその後方にまっすぐ突っ込んだ。がつん、と音がして、車のボディに傷がつく。ミルクティー色をした車は、丸井の好みじゃない。スモークのかかった後部座席に目を凝らすとぬいぐるみが座っている。その隣に、チャイルドシート。

腰元の銃を撫で、自転車を捨てて校舎に入る。静かな廊下で授業中だと知れたが、構わず歩いて教室に向かった。教室に入ると視線が集中し、どうやら小テストの最中だったらしく仁王を確認した目はすぐに机上へと戻っていく。あきれた教師だけがとんだ重役出勤だな、と顔をしかめた。小テストどうする、と聞くので黙って首を横に振る。

「すまんの。俺学校は大好きなんやけど、今日は起きれんかったん」
「今日はじゃないだろ。補習だな」
「ちゃんと来ただけ偉いじゃろ?」
「偉くない」
「なあ、今何限?」
「……5限だ」

別に勉強が嫌いなわけではないから授業はそこそこ真剣に受ける。隣を見て机から教科書を引っ張り出し、あとは授業に参加する。6限の体育はやや憂鬱だったが、クラスメイトに誘われてサッカーをした。担任の体育教師にこってりと絞られたあと、放課後丸井のところへ、の言葉を聞いて笑ってしまう。ジャージの腹に隠した銃は、いつだって使えるのだ。

生徒指導室に着いたのは仁王が先だった。ドアを開けて入り口に立ち尽くして窓の外を眺める。生徒指導室という名の空き教室には後方にほこりをかぶった机や椅子が寄せられていて、そのうちの二組が部屋の中央で向き合う形で並べてある。窓の外は夕方だった。日が落ちるのが早い。夜になってしまうとこの教室はどうなるのだろう。

「あ、仁王先輩だ」
「……よお」
「また呼び出しっすか〜?」

からかう調子の後輩に笑い返す。その後ろに立つのは彼の担任で、彼も何かやらかしたのだと知れた。指導室は予約済みだから進路室行くんす、と無邪気に笑う。仁王、馴染みのない教師に名前を呼ばれてそっちを見る。もう年配の貫禄だが、実際の年齢はまだ若いらしいとの噂の真意はどうなのだろう。

「丸井は少し遅れる」
「はあ」
「今警察の方が見えていて、話をしているんだ。もうまもなく終わるとは言っていたが」
「警察?」
「……なんだ、知らんのか」
「仁王先輩どうせまた遅刻したんでしょ。なんかねー、丸井先生が銃弾拾ったんだって!んで朝から警察持ってったら丸井先生も遅れてきて大騒ぎっすよ。こっちはこっちで緊急集会とかやられたし」
「銃弾?丸井が?」
「仁王」

敬称を忘れたことをとがめた教師にもう関心はない。そのことがわかったのか、教師は後輩を促して廊下を行ってしまう。
指導室に入ってドアを閉めた。薄暗い部屋で銃を取り出し、昨日と同じようにその中身を確認する。昨日は確かにそこにあったふたつの銃弾は姿を消し、ぽかりと開いた穴しか仁王の目には映らなかった。都合よく弾を手に入れる機会が訪れないことだけはわかる。
背後でドアが開いて、うわびびった、と丸井の声がした。電気ぐらいつけろよと言いながら部屋の明かりをつけた丸井はドアを閉め、仁王が銃を向けていることにワンテンポ遅れて気がついた。その表情は昨夜のような怯えじゃない。こんなところで、という焦りだ。

「ふざけんなよ」
「……そっちは、お前寝てる間も離さなかったんだよ。寄越せ」
「ほんっま、ふざけとる、やっぱり昨日使ってやればよかった」
「できなかったくせに」
「……殺してやる」
「……お前、まだ俺のこと好きなのかよ」

反射的に銃を向けた。手品もできない銃は一体何に使えるのだろう。脅しもできない。殺すこともできない。もはや凶器ではなくなったこの物体を向ける姿はひどく滑稽だろう。冷静な丸井のその表情の裏では仁王をあざ笑っているのかもしれない。

「自惚れんな。誰が」
「わかりやすいんだよ、お前は」

丸井にとって子どもにしか見えない自分が嫌だった。しかしだからこそ、子どもなりのアピールしかできなかったのだ。大人のやり方は知らない。子どもも生めない。自分が女の体ならどんなによかったことか、あれは丸ごと武器になるのに。

違う、恋ではなかったのだ。今も、以前も。あんなみっともない感情はいらない。もっとスマートに振舞ったはずだし、子ども扱いされるいわれもなかったはずだ。だってわがままも言わなかった。無理強いもしなかった。わかった、とうなずいた。恋じゃない。ただ、丸井の一番になりたかっただけだ。優しく抱かれたかった。愛を囁かれたかった。それもすべて昔のことで、そんなかわいらしい思いは性欲に塗り潰されてただ丸井を犯したいと思ったのは、絶望を感じたからじゃない。

「……俺のすることは、どれもあんたを笑わせられんのじゃな」
「たりめーだ、ばかなことばっかりしやがって」
「他のやつと一緒なんは意味がない」
「仁王」

恋なんかにはしたくない。そんなに簡単な感情ではないのだ。だからキスはしない。あんな行為は不要だ。

「……丸井、俺とお前、どっちが死ぬ?」

武器がなければゲームオーバー。いろんな手段を考えながら、きっと丸井を殺してみせると強く思う。そのときにはきっと、丸井というおもちゃを手離すことができるはずだ。前に進めるはずだ。やめろと言った丸井の声に昨夜を思い出して、近づいてきて銃を取ろうとした手を銃身で叩き落す。すぐに腕を上げて、銃口を胸に押しつけた。意味のない行為でも丸井は止まる。

「尻出せよ。それともこれ握ったまんま、警察に飛び込んでほしいか?」

この俺が、不器用な恋愛などするものか。だから泣きはしない。泣くはずがない。ゲームで負けて泣くような子どもではないのだ。

 

 

081106