※やぎゅにおの百合とか
立てば芍薬、座れば牡丹、
歩く姿は百合の花 2
「つまんない……」
「だから言ったじゃん、レベル低いって」幸村にわがままを言って連れてきてもらったのは、昔通っていたというテニススクールだ。丸井がまだ顔を出していると言うからどんなものかと思えば、これでは幸村の引っ越しもわかる。それなりに真剣なのだろうが、コーチがあまりうまくないようだ。楽しそうではあるからそれはそれでいいのかもしれない。
「ブン太は?」
「まだ来てないみたい……ああ、今来たよ」きぃっ!といつもの自転車が止まり、ジャージ姿の丸井が降りる。眠そうにあくびをかみ殺しながらコートの入り口に近づいて、仁王たちに気づいた。日曜は先約がある、と仁王の誘いを断ったことが後ろめたいのか、一瞬逃げ腰になった。
「な……なんでいんの」
「ブン太のテニス見たかっただけ」
「テニスったって……今日は小学生に教えるバイトみたいなもんだぜぃ」
「そんなんやっとるん?」
「バイトじゃなくてボランティアだろ。ブン太は世話焼きだから」
「バイトだって。俺使用料も月謝も払ってねえけど使わせてもらってるし」
「安いなあ」
「幸村さんは嫌味を言いに来たんですか」
「はいはいごめん」
「仁王もやってく?」
「ん〜……」一応おしゃれをしてきた身としては簡単にうなづけない。まだタイツは新しいしな、そもそもミニスカートをはいている女を誘うなよ、思いながらも断り方を考える。ブーツのヒールは高くないからやろうと思えばできるだろうが、真田ならそんな格好でテニスをするなど言語道断、と怒鳴りそうだ。近づいてくる足音に気づいて丸井が振り返る。
(出た、むちむちぷりん……)
「丸井先輩、みんな待ってますよ」
「おう、すぐ行く」
「あ、幸村先輩もいらしてたんですか」部活の後輩だけではなくテニススクールにも顔を出していたのか。以前柳生と紹介された年下の少女は仁王にしてみればわかりやすくて、丸井はどうして気づかないのだろう。それともわかっているのだろうか。丸井好みの体型だろうと思うのだが。今はきっちりとジャージを着込んでいるが、スコートをはいたらエロいだろうな、などと考えて脳内で着せてみる。
「こちらの方は?」
「俺の彼女」
「え」丸井の簡潔な答えに、彼女の手からボールが落ちた。やっぱりただの鈍感バカか。柳生がぐずぐずしているから、丸井は仁王のものになってしまった。同情してやる気はない。自分の持つ武器も使わずして勝とうなどと、夢を見るのは勝手だが男はもっと単純だ。
「なんだよ、そんなに驚くことか?」
「あ、いえ、そんなつもりでは……その、……」
「あー、まあ、なんつうか……俺だって別に体だけが女だと思ってねえよ」丸井の視線が露骨に胸に送られた。気の毒そうな顔をしている。腹立つなあ、ぼやいてやるとすぐに顔をそらした。
「いつ終わるん?」
「ん?まああいつら集中力ねえから1時間ぐらいで終わるけど」
「ならそれ終わったらデートせん?」
「……俺ジャージだけど」
「ええよ。それまで見とってええ?邪魔せんから」
「……俺はしおらしいときのお前を信用してない」
「何もせんって!ええじゃろ?」
「……いいけど、邪魔すんなよ。あとガキにもちょっかい出すなよ、絶対練習にならねえから」
「ん、ご褒美くれるならイイコにしとく」
「いや……か……考えとく」
「うふ」丸井に笑いかけてその笑顔をそのまま柳生にシフトさせる。ご褒美の内容がその脳味噌で考えたことのないようなことだと知らない彼女はぼんやりしていたが、仁王の視線に気づいてはっと姿勢を正した。行くぜぃ、耳を赤くした丸井に呼ばれ、一礼して追いかけていく。その尻を見ながら仁王が笑ったのを、幸村だけが見ていた。
「……くだらないこと考えてるなあ。巻き込まれたくないから俺先帰るね」
「写メ送ったろか?」
「いらないよ」
*
更衣室に響く溜息を聞きながらそっと忍び込む。ブーツの足音にだけ気をつけて奥へ向かえば、背中を向けた柳生が着替えているところだった。脱いだジャージを丁寧にたたんでいる隙に背後に近づく。柳生が気づいて振り返ろうとした瞬間に抱きついて、その胸を鷲掴みにした。
「きゃっ!」
「おー、ええ声」
「ちょっと、何をするんですか!」
「でっかいのう、手に余っちょる。ふぅん、未知の世界じゃな。こんだけでかくても柔らかいもんじゃのう」
「やめて下さいっ!」
「いやじゃ。人の男に色目使う女にはお仕置きせんとな」
「きゃあっ」Tシャツをまくりあげて下着も手早く外してしまう。ぷるんと解放された胸を隠してしゃがみ込んだが、それは自ら逃げ道を断つ行為だ。ちゅっちゅっと耳元で唇を鳴らしてやって、下から持ち上げるように胸を掴む。揉みしだきながら両手のガードを払って乳首をつまむと悲鳴を上げた。かわいいものだ。こんなかわいらしい時期は自分にはなかったな、思いながら赤くなった耳に息を吹きかける。
「あっ、な、なぜこのようなことをッ、やめっ……」
「えーのう。このサイズならブン太のちんこ挟めそうじゃな」
「ッ!」
「宝の持ち腐れじゃな。なあ?柳生ちゃん」
「あっ、んああっ引っ張らないで……ッ」
「乳首がええの?」
「んぁっ」
「やーらしい子じゃねえ。ブン太にこんなことされたいって思いながらオナニーすんの?」
「しっ、しません!」
「そうなん?教えたろか?」
「結構ですっ!」
「あん」仁王を振り払って柳生は立ち上がる。震える足が子鹿のようでかわいらしい。
(いや、子牛かな……子牛のおっぱいってどうなんかな)
「な、何のつもりですか!」潤んだ瞳でにらまれて、知らぬ間に眼鏡が落ちてしまっていることに気がついた。それを拾って自分の耳にかけてみるが、きつすぎて何も見えない。仁王が大人しい間に柳生は下着をつけなおし、Tシャツを引き下ろす。
「……やけん、お仕置きってゆうたじゃろ?」
「何のことですかっ」
「このおっきいおっぱいで、なぁんでブン太に迫らんかったん?うかうかしとるけん、俺みたいなアバズレにかっさらわれるんよ?」
「……そんなんじゃありませんっ、丸井先輩のことはっ……」
「ふぅん……ほんなら、ええんじゃけど?……焦ってちょっかい出したら、今日ぐらいじゃ済まさんよ」
「……丸井先輩が愛想を尽かす方が先でしょうね」わずかな反抗を見せた柳生に笑いかける。意地悪く口端をつり上げてやるとわずかに怯んだのがわかった。勝負にならないと確信する。
「誰が逃がすか。俺は言葉も体も全部使ってブン太を自分のものにしたん。ブン太がしたいって言うならどこにだってちんこ受け入れてやるよ。──もしブン太に手ェ出したら、野菜でもつっこんで処女膜破っちゃるけん覚えとき」
「ッ……」
「イイコの柳生ちゃんはブン太に告げ口したりもせんよね?」笑顔でしめたあとにブーツを脱ぎ捨て、くるくるとタイツを脱いでしまう。怪訝そうな顔をした柳生に向けてタイツと一緒に脱いだ下着を広げて見せた。
「これからブン太とデートなん。つってもどっかでセックスするんじゃけど?」
「なっ……!」
「じゃあね、柳生ちゃん」素足ではきなおしたブーツの音も高らかに、投げキスを残して更衣室を出る。駐輪場に置いた自転車にまたがった丸井が手持ち無沙汰に待っていた。遅い、と不満げに口をとがらせる丸井に近づいて腕をとり、そのままジャージのポケットに手を滑らせる。
「あげる」
「は?」
「どこ行く?」ポケットに押し込まれたものを警戒しながら丸井が手を差し込み、指に触れた布を引っ張り出す。視界に飛び込んだものが下着だとわかった瞬間丸井はすぐにポケットに押し込んだ。それに満足して、えっち、とささやいてやる。
「大事にな」
「おっまえ……い……今、はいてねえの?」
「確かめる?」丸井の手を太ももに導く。周りを気にする様子を見せながらも指が伸ばされ、茂みを撫でた。湿った場所に指先が沈み、ぞくりと身を震わせる。丸井がのどを上下させて唾を飲んだ。濡れた指先を太ももで拭って丸井がぎこちなく笑う。
「……変態」
「ご褒美、待ちきれんの。……こんな女はいや?」
「……俺にしかしないならいい」
「ブン太以外にこんなサービスしてやるわけがなかろ?」体を伸ばして頬をついばむ。丸井の代わりに自転車のスタンドを立たせて、急かすように服を引っ張った。自転車を出して丸井はゆっくりとこいで進む。
「なあ、ブン太、あの柳生って子は好みじゃなかったん?」
「柳生?ああ……まあ、いい胸だよなあ」
「好きにはならんかったん?」
「……なんか、柳生をそういう目で見たら罰が当たる気がする」
「何それ」
「汚せないっつーか、なんつーか」
「俺は汚れか」
「柳生はお前と違ってかわいいだろうが」
「……ん、まあ、かわええな」柳生は今夜オナニーをするだろうか。そんなことを思うとぞくぞくと鳥肌が立つ。マウンテンバイクの後ろに無理やりまたがって、丸井の肩を叩いた。
「運転手さん、マッハで」
「どちらまで?」
「どこでもええ。早くしたい」
「ッ……」風に遊ばれるスカートを抑えて、自転車をこぐ丸井のつむじを見る。レディぶっても丸井を落とす自信はあるが、今は体の火照りに支配される。シャツの隙間から手を差し込むと自転車が大きく揺れた。
090213