※社会人/オリキャラとブン太がいちゃつきます/ニオブンはくっつかない
盗人猛々しい
あの頃は寝ても覚めてもテニスのことを考えていた。テニスが俺のすべてだ。
──そう言い聞かせて、ずっと、自分の恋心を閉じこめてきた。たかが外れると人間はこんなに落ちぶれるものなのか、自分が弱いだけなのか、裸の腕を撫でて隣で寝息をたてる見知らぬ男を見る。名前は教えていないし聞いてもいない。最低限の照明しかない店とこの部屋とでは彼の色も違って見えて、どうして一瞬でも仁王に似てるなどと思ったのか、血迷ったとしか思えなかった。否、血迷っているとしたら今に始まったことじゃない。
中高6年間、恋い焦がれた男がいた。今思えばあの幼い思いは恋であるとわかる。あの頃はステレオタイプな恋愛の形しか知らなくて、男は女に恋をするものだと思いこんでいた。男が男に恋をするなんて考えたこともなかった。
大学に入ってから部活の歓迎会で酔わされて、介抱してくれていたはずの先輩の部屋で、朝起きたら犯されていた。気持ちよかったかと聞かれてうなづいたのは、仁王に抱かれている夢を見たからだ。その日自分は記憶のすべてを使って仁王に抱かれた。それに気づいてから仁王には連絡を取っていないし、向こうからも連絡はない。ただのチームメイト、結束は高かったがテニス以外での関わりはと言われると皆無に近く、同じ場所でテニスをしないだけで縁は遠くになってしまった。丸井にとってはそれでよかったのだろう。隣の寝顔は若かった。まだ学生かもしれない。気がついたら自分はもう社会人で、節度のある大人であるはずなのに今日のように酔っては不道徳な関係を結ぶ。初めてセックスをしたあの先輩には男とセックスをするときのテクニックをいろいろと教わって、しばらくつき合って別れた。どんな男とつき合っても続かないのは、自分が仁王を求めているからだと知っている。いい加減美化されているような気がしてくるが、本人には会いたくなかった。似た人と抱き合うほど焦がれているのに。
優しく髪を撫でつけてやる。この男は関係の継続を望むだろうか。それとも今日限りの、袖触れ合っただけのつながりになるだろうか。どちらでもいい。どんな男でも、傷ついたり傷つけたりする。「ん……」
「ごめん、起こした?」
「……俺いつの間に寝たの?」
「イってすぐ」
「うわ、気絶とか……」
「かわいかったぜぃ」
「……ほんとに?」これは仁王というより赤也に似てるな、後輩を思い出す「犬っぽさ」だ。撫でていた手を取られてそれに柔らかく口づけが降る。冷たいよ、頬に押し当てられると確かに自分が冷えているのがわかった。
「ねー、彼氏いる?」
「今はいない」
「モテるんだー」
「やー、もうおっさんよ」
「そんなことないって」
「知ってるか?おっさんの方がテクニックはあるんだぜ」
「……知ってる」
「お前相当遊んでるだろ」ふふ、と笑って男は体を起こした。抱きしめられて背中を撫でられ、冷たい肩にキスをされる。会社やめようかな、そんな意味のないことをぼんやり考えながら、数時間前のようにベッドに沈んでいく。
──仁王、今日のお前は素直だな。もっと高くケツ上げな、深く奥までくれてやる。
*
仁王から届いた結婚式の招待状は新聞に挟んで廃品回収用に紐でまとめた。去年の幸村の結婚式のときはちゃんと行けないと返事を出したが、仁王からの封書は二度と見たくなかった。
それなのにどうして今、仁王はここで寝ているのだろう。高校時代の悪友が来るだけのはずだったのに。当の本人は酔いつぶれた仁王の世話が面倒で、初めから一番近かった丸井の部屋に置いて帰るだけのつもりだったのだろう。ドアを開けた丸井に仁王を押しつけるなり帰ってしまった。玄関で呆然としていると仁王がくしゃみをして、自分で立っていられない酔っ払いを追い出すわけにも行かずとりあえずベッドに運んでやる。
──そんなわけで無防備に眠る仁王を、もう30分は見つめている。時折うなったり体勢を直したり、そのたびにびくびくしてしまう。(……スーツ、しわになるよな)
明日が休みだからこんなに酔いつぶれるほどむちゃな飲み方をしたのだろう。仁王を引き取ってくれるところへ連絡したいところだが、親元へかけるのは見当違いだろう。そうかといって、名前も知らない仁王の彼女の連絡先を知るはずもない。
溜息をつき、意を決して仁王に近づく。自分が酔っ払いに無体を働くような子どもではないことに感謝しながらも、理性はフル動員だ。体を返しながらジャケットを脱がせて、ベルトを外してさっさとスラックスも脱がしてしまう。布団をかけて仁王を視界から消し、スーツはハンガーにかける。こんな日は夢だと思ってさっさと寝てしまおう、明るくなれば仁王の酔いも醒めて、自分も大人として対応できるはずだ。布団が暑いのか、うごめいて頭を出した仁王の寝顔を見る。いつの間にか髪は無難な茶髪になり、少し長めではあるが丸井の知る姿とは程遠い。それでもひと目で仁王だとわかってしまう自分は、仁王のどこが好きだったんだろう。体でしか恋愛を語れなくなった今では思い出せない。
布団を肩までかけ直してやり、ベッドサイドに水を置いておく。自分はソファーに横になった。誰かが部屋にいるのに離れているのがどこか新鮮で、しかしそれが自分と仁王との距離なのだと思う。──どんな女と幸せになるのだろう。布団をかぶって目を閉じた。
*
「なあ、ブン太」
「ん……何だよ……腹減った?」
「ブン太、」
「違うの?つーかお前学校……」揺り起こされて目を開けて、寝ぼけた頭を強制的に覚醒させるような光景が飛び込んでくる。仁王がいる。目の前で、困惑した表情で息をつくのは、間違いなく仁王だ。薄闇の中、手を伸ばしても仁王は逃げない。キスをしたくなって慌てて振り払う。──そうだ。酔っ払った仁王が、部屋にいたのだ。
「よかった、ブン太で合っとった。知らんやつんちやったらどうしようかと思ったわ」
「……大山がお前捨てて帰ったんだよ。ったく、いい年してむちゃな飲み方すんじゃねえよ。酔いは?」
「はは……ちぃと頭痛いぐらいかの」
「……寝てろ」仁王のそばを早足に抜けて、タンスから出したジャージを投げる。脱がしたのは自分だが目の毒だ。明かりをつけて台所に向かい、仁王から死角になってから息を吐き出す。急な明るさで目が痛い。
「なーブン太、久しぶりやの。高校出てから?」
「……そうかもな」水を飲んではやる心臓を押さえ、顔を出して仁王を見た。珍しそうに部屋を見ている仁王の姿に胸が締めつけられる思いがする。ベッドに寝かせたことを後悔した。
「いい部屋住んどるのう」
「金の使い道ねーから」
「あー、仕事忙しそうやしね。幸村の結婚式も来とらんかったし」
「……うん」
「あ、俺んは?ハガキ来た?なんかあっちの友達ばっか来そうなん、男呼べって怒られて」
「はは、なるほどね」普通に話ができているだろうか。声がうわずっている気がしてそばへ行けない。 殺風景な部屋だ。帰ってきて寝るだけ、ときどき男を連れ込んで。
「……なあ、ブン太」
「何?」
「大山のセフレって、ほんま?」
「……え?」振り返った仁王の目が真剣だった。顔がひきつる。20何年と生きてきても演技もできない表情筋に嫌気がさす。
──何がセフレだ。一度勢いで抱かれてやっただけじゃないか。おまけに仁王にしゃべったと言うことは、他にも言って回っているのかもしれない。どんなにセックスが下手だったか言い触らされたいのだろうか。「何で、違うよ。酔っ払いの言うことマジに受け取ってんじゃねえよ、な」
「……やんね」
「……別に、本当でも仁王に関係ねえだろ」あ、冷たい。自分の声色に慌てて笑顔を向ける。
「明日、休み?」
「あ、うん。……あ〜、でもなんか親戚会議が……」
「はあ?なんでそんな日の前日に酔いつぶれてんだよ。寝とけ、起こしてやるから」仁王を寝かせようとベッドに近づいて布団をまくる。ほら、と呼んでやると素直にそこに座った。それでもまっすぐ丸井を見上げている仁王に動揺する。
「何で俺と会おうとせんの?」
「は?」
「幸村んときもそうじゃろ」
「……お前まだ酔ってんの?」子どもにするようにベッドに寝かし、布団をかけて頭を撫でてやる。デジャブを感じて少し考え、先日同じことをもっと若い男にしてやったことを思い出した。改めて考えると仁王がここにいるのが不思議に思える。もう別の世界にいるのだと思っていた。
「おやすみ」
*
やべえな、これは完全に変態だ。そんなことを思いながら、仁王の服を脱がせていく。まだ筋肉の衰えない胸に興奮する自分がいて、部屋で蠢く自分は人間に思えなかった。布団をベッドから落として、自分が差し出したはずのジャージも脱がしていく。仁王は酒のせいかぐっすりと眠っていて、起きるまでにどこまでできるだろうかと考えた。裸にした仁王を見下ろし、体がふるえて涙が出そうになる。友情が絶えるとわかっていても手を出さずにいられない自分はなんてつまらない男なのだろう。興奮に高ぶる自身に手を添える。仁王には触れないように四つん這いでまたがって、顔を見ながら抜いた。行為を責める心がよけいに快感にあおるだなんて、どうしようもない。人間本能だけになったら終わりだな、自虐的に笑って仁王に顔を寄せた。名前を呼んでほしい。キスもできないの。
「……ああ」
泣きそうになりながら先走りで濡れた手を後ろに這わす。疼く体に指を差し込んで、喜ぶ自分が惨めだ。
「……にお、ふぁ……うっ」
仁王の胸に涙が落ちる。堪えきれなくなってあふれた涙で力が抜けて、そのまま仁王にすがりつく。
「ん……」
「ごめん、ごめんな、仁王」
「……ブン太?え、ちょ……」
「……ごめん。ちょっとだけ、じっとしてて、すぐ終わる。ごめん、」仁王に触れているものが何かわかったのか、仁王が目を丸くしたのがわかる。その表情が嫌悪に変わるのを見たくなくて、うつむいて胸に額を押しつけた。その手は性器を握る。ああやばいな、ここでイったら仁王を汚してしまう。
「ブン太」
「……ッ……あ、あっ!」手の中で弾けた熱をかろうじて受け止める。肩を掴まれて顔を上げさせられた。
「ブン太?どうして」
「好き」
「ブン太」
「好き、もうやだ……何っ、でっ……お前からハガキ来たと思って、浮かれたのに、っ……結婚って何?何で?俺だって仁王のこと好きなのに……」
「ブン、太……」
「……仁王がいる。夢ならこのままヤっちゃうのに、なんでこれが現実だって知ってんだろ。やだよ、俺、こんなことになるならテニスだけしてたかった……!」仁王の前でみっともなく泣きじゃくり、ふたりとも裸なのに抱き合えない。体はほしいと叫ぶのに。最悪だ、最低だ。どこで歪んだのだろう。
「ブン太、……落ち着いて、なあ……」
「……やだ。俺今冷静になったら、死ぬ。こんなの恥ずかしい、バカみたい……ごめん、ほんと、気持ち悪いよな……ごめん、ごめん……」好きだった。テニスにかける情熱も、一緒にふざけて笑う声も、今ならはっきり思い出せる。親しみを込めて名前を呼ばれるのが嬉しくて、落ち込んでいると気づいて励ましてくれて、そばにいてくれた。いつだって会いたくなるのは仁王だった。どんな相手と楽しい時間を過ごしても仁王を思い出して、時に妄想の中で仁王に会った。どうして、いつからこうなったのだろう。
体を起こした仁王は戸惑いながら、自分を見ている。視線だけ感じる。「ブン太」
「呼ぶなっ」
「……ごめん、こんなことさせて」
「違う」
「ありがとう」
「……バカだろ、お前、……なんでだよ、もっと冷たくしろよ、そしたらっ……」長年の思いがあふれて止まらない。ひとりの夜に仁王を思って泣いたことは何度もある。それでも出し切れなかった気持ちを仁王に直接ぶつけるのは、ただの言い訳だ。
「……仁王、仁王」
「何」顔を上げると笑みは優しい。甘えていいと許すような表情、きっと仁王は何か勘違いをしているのだ。涙が止まらない。
何度も何度も考えた、告白なのに、どうしてこうなるのだろう。シナリオと全然違う。過去に考えた、あの完璧だと思っていたシナリオはどこへいったのだろう。抱いて、とすがりそうになる。体の準備はできている。開発した体は仁王に苦痛を与えることもないはずだ。自分がもっと非道になれればいいのに。女から幸せを奪ってやると思える鬼畜になれれば、仁王を縛りつけて犯してやるのに。
「ごめん……」
「……ごめんな。俺、今日、ほんまはブン太に会いたくて大山に頼んだん」
「え、」
「ブン太に一番に知らせたいぐらいやったんよ。俺の大事な、友達やったけん」
「ッ……」
「ごめんな、嬉しくない報告になって」
「うっ……あああ……」そうだ。告白するなら精一杯かわいく、髪も服も整えて、それでいて明るく──冗談だとごまかせるように、しようと思っていた。大学生活の間に何度もしたイメージトレーニングは、いざというときに全く役に立たない。
「……もっと、早く言えたらよかった」
*
「仁王、おはよう」
「……おはよう」仁王を起こすと寝ぼけたように部屋を見回し、丸井を見つけてぎくりとした。それにただ笑い返して離れていく。
「スーツ、そこにかけてるから。シャツも適当にアイロンかけた。まあ、帰るだけだし襟がピンとしてりゃいいだろ?飯食う?」
「……ブン太」
「ほら、もう8時だぜぃ」ベッドに体を起こした仁王にコーヒーを差し出した。ミルクと砂糖を差し出してみるが黙って首を振られる。……昨日のことを嘘にしてみせようとしている。一夜の夢。仁王は自分の空回りでも、それに合わせてくれるだろう。コーヒーを飲んで笑う仁王にほっとする。
仁王が何か言いかけたときに来客があり、逃げるように玄関へ向かった。こんな時間に誰だろうか。朝帰りをするような職の人間とはつき合ったことがない。ドアを開けると立っていたのは子犬のような男。最近よく会うようになった学生だ。「よかった、丸井さんいたんだ」
「何?朝から」
「あのさ〜、こないだパソコン借りて課題やってたじゃん、俺そのデータUSBに移すの忘れちゃって。俺のファイル、消してない?」
「あー、一応置いてある。今いるの?」
「今日提出なの!」
「ったく……まあいいか、入れ。客いるから騒ぐなよ」
「はーい。……あれ?俺お邪魔だった?」
「違います〜。昔の友達だよ」どうかなあ、と冷やかして笑う彼の頭を小突いてやり、面倒そうなブーツを脱ぐのを待たずに先に部屋に戻る。
手持ちぶさたにしていた仁王に声をかけるのに、一拍必要だった。着替えを終えてネクタイをしめる仕草に、正直くらくらする。人のものだ、と言い聞かせた。「仁王ワリィ、人来たけど犬だと思って無視しといて」
「犬?」
「ペット」
「……はぁ」
「飯は?」
「や、ええわ。なんかいろいろすまんね」
「こちらこそ」
「やっと脱げた!……あ、どーも、おはようございます」
「あ、どーも……?」
「ちょっと丸井サン、いい男じゃん!彼氏!?しちゃった!?」
「してねえし彼氏じゃねえ。これはもう売約済みなの、結婚控えてんだから触るな見るな」 「見るのもダメっすか」
「ダメだ。学生はレポートの心配しな」
「そうでした」隣の部屋にひっこむ小さな嵐に対応できずにいる仁王を見て思わず溜息をつく。……どう思っているのだろう。変態だと言われても否定はしない。
「におー!帰るんだろ」
「ん、ああ。……誰?」
「ペットだって」玄関まで見送って、仁王が靴を履くのを待つ。これ俺の靴じゃない、と言うのを笑った。飲み会で誰かのものと間違えたのだろう。一緒に笑いあっていると涙が一筋こぼれ、黙ってそれを拭った。仁王は見ただろうが何も言わない。
「──じゃあな」
「ん。またね」
「……ああ」仁王が起きる前に鞄に結婚式不参加のハガキを入れておいた。帰ってから見るだろう。見なくともわかったはずだ。幸せになるはずだった仁王の新婚生活によけいなものを差し込んでしまったかもしれない。今となっては残るのは後悔と羞恥だ。玄関を出る仁王の姿に一瞬だけ幸せな夢を想像して、二度とないこの瞬間をかみしめる。仁王を見送る朝、だなんて。ずっと憧れた光景だった。
閉まったドアのポストから日の光が射し込んでいる。口の中が乾いていた。深呼吸を繰り返して台所へ戻り、水を飲む。「丸井さ〜ん、プリンター借りていい〜?」
「使い方わかるか?」
「だいじょ〜ぶ」飛んできた声に答えてやりながら、コーヒーが飲めないお子様のために紅茶を入れてやる。それを隣の部屋に運んでついでにブラウザをのぞき込むが、さっぱりわからなかった。
「ありがとー」
「朝飯は?」
「焦ってたからまだ。丸井さん出かけちゃってたらやばいと思って」
「朝はちゃんと食え。ったく……卵ぐらいなら焼いてやる」
「目玉焼き食べたい!」
「はいはい」少し古いプリンターはうるさい音をたてながら印刷していく。その音を聞きながら伸びてきた手に引き寄せられるままキスを交わした。昨夜が長すぎて、誰かとキスをするのが久しぶりに思える。
「……あの人とえっちしたの?」
「してねえよ。友達だっつったろ」
「ふうん……ねえ、俺も今日泊まっていい?丸井さんから知らない男の匂いがする」
「……バーカ」焦っていたという割にはしっかりとワックスでセットされた髪をかき乱してやり、文句を聞きながら部屋を出る。誰かに思われるのは簡単で、嬉しい。利用するようなことをしたくないが、この男は抜けているように見えて隙のない男だ。丸井が弱さを見せればつけ込んでくるだろう。
「ね〜、丸井さん」
「納豆は?食える?」
「好きだけど〜、行ってらっしゃいのちゅーが微妙なことになるからなあ」
「なんだそれ。しねえからな」
「あ、歯ブラシ置いとけばいいよね!」
「……幸せな頭だな」台所に絡みに来た男が体に触ってくるのを好きなようにさせてやる。自分はフライパンに卵を落とした。
「……丸井さん、俺とつき合ってよ。ちゃんと」
「ん〜?……もうちょっと、待ってろよ」もう少しすれば気持ちの整理もつくだろう。ふてくされる頬をつついてやった。
仁王が幸せになるように、と願うのは勝手だろうか。まだ憎悪も欲望も、胸の内に残っている。仁王もその妻になる人も、丸井に願われたくないかもしれない。そうだとしても、仁王を好きだった思いは変わらないのだ。
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