※ブン太の初めてとか


姿花 1

 

 

「あ、ああっ……」

中をかき回されておかしくなる。触られているのは下半身なのに一瞬で頭まで熱くなって、人間の体を走る電波は優秀だ。丸井の指が膣を犯す。さっきまでラケットを握っていたくせに。熱い息を吐く唇が欲しくて頭を抱き寄せる。抱き合ってめちゃくちゃなキスをして、ふたりの体の間で主張する熱の頭を撫でると舌先に歯が当たった。

「……おっぱい触って」
「……ほとんどねーじゃん」
「おっきくしてよ」

男の手のひらが乳房をつつむ。丸井が好きだというタレントには及ばないかもしれないが、初めて触れる女の胸の感触にそれどころではないようだった。柔らかい肉をもみしだく手つきに悦びの声をあげる。いやらしい女だと思われただろうか。もうそれでも構わない。離してやる気はないのだから。
調子に乗って乳首に吸いついてくる頭を撫でる。子どもじみた行為がセクシャルになるのはどういうことなのか、顔を寄せて耳殻を甘噛みしながら思った。

「はぁっ……ブン太、もうええよ、ちょうだい」
「仁王……」

吐息が混じる。視線を絡めて唇を吸った。見据えた丸井の目が揺らぐ。

「……仁王、あのさ」
「何?」
「……俺童貞なわけで、彼女もいねえし」
「さっき聞いた」
「……だからさ、その……コンドームがね、ないわけですよ」
「なんじゃそんなこと。どうでもいいけん、はよ入れて」
「よっ、よくねえだろ!」
「ええの!大丈夫やから」
「何でだよ」
「ピル飲んどるもん」
「……お前そんなのに頼んなきゃヤバいほど遊んでたわけ!?」
「あーもう、念のため飲んどっただけじゃ!生でさせるようなお粗末なことするわけないじゃろ!」
「そういう問題かよ!」
「せっかく生でさしたろうと思って飲んでんのに」
「ノーセンキュー!セーフティーセックス!」
「意味わからん。ええか、男と女なんかしょせん棒と穴なん、やけんうだうだ言わんと突っ込みんしゃい」
「なんでお前そーやって下品なんだよ!男子か!」
「お前もここまできて女々しいこと言わんとって!ギンギンに勃起させとって説教すんな。先走りでぬるぬるじゃ」
「ッ……」

そそり立つペニスを握って迫る。手の中でびくびく震えるものに濡れそぼった女をすり寄せた。丸井の表情が変わるのを見て唇に笑みを乗せる。

「俺ももうぐちゃぐちゃなん。ブン太がこんなんにしたんよ?」
「仁王……」
「次からゴムでも何でも用意しちゃる。今日はもう入れて。なあ、入りたいんじゃろ?入れてくれんと明日学校で童貞って言いふらしてやるから」

指先で先端をこねて耳に息を吹きかける。しばらく動かなかった丸井は意を決したように息を吐いた後、仁王をベッドに押し倒した。足を開かせて腰を進める。

「……いくぞ」
「うん、入れて」

くぷりと先端を受け入れた自分の体が快感で震える。丸井を抱き寄せて、初めて感じる質量に甘い声があふれた。やっぱりこいつのでかい、意識しなくても締めつけてしまうものを体の中で感じる。脈が乱れた。

「……仁王?」
「童貞卒業おめでとう」
「……そら、どうも」
「俺ん中、気持ちいい?」
「うん」
「おっぱい触って、キスして、動いて」
「初心者に難しい注文すんな」
「そんじゃあめちゃくちゃに奥突いて」
「……知らねえぞ」
「ああっ!んっ!」

出し入れされる熱に擦られて体がどろどろに溶けていく気がする。童貞でも腰の振り方は知ってるのか、受け入れるのが精一杯で言葉も出てこない中で丸井だけを感じている。耳元で吐き出される湿った呼気に耳から犯され、自分の愛液で濡れきった体に丸井の欲望が押し込まれている。筋肉の軋みさえわかりそうなほど近い。密着する肌は汗ばんで、それがなぜか仁王をあおった。

「そ、こぉ……んあ、ああ」
「どこだよッ……」
「ん、あんっ!そこっ」

腰を引き寄せられて更に奥まで入ってきた。ぶつかり合う肉の音、尻まで愛液で濡れている。行き場のない衝動を吐き出すように丸井が声を絞り出して、より強く抱きしめた。

「出してッ……!」

 

 

*

 

 

「……AVみたいにしてやればよかった」
「は?」
「『イくの?イっちゃうの?いいわよ、センセエが受け止めてあげるから、中に出してェ!』って」
「なんで教師モノなんだよ」

仁王の腹に吐き出した精液を拭いながら、丸井はあきれたように溜息をついた。できる限り色っぽく喘ぎながら同じようなセリフを繰り返すと少しかたまったのは、アリだったとみていいのだろう。

「中で出してええってゆうたのに……」

裸のまますり寄ってあぐらの膝に乗りあがる。ぎょっとした丸井の頭を抱いてそのまま胸に押しつけた。抵抗はないが鼻先を押しつけるように胸を吸われてくすぐったい。乱れた髪をめちゃくちゃにかき回してつむじに唇を落とす。

「俺ちょっとぐらい無茶したって壊れんから、好きにしてええんよ」
「……大事にしたいんだからそうさせろよ、初めての彼女なんだぜぃ」
「んー?ふふ」
「……なんだよ」
「おっぱい揉んで。おっきくなるかも。おっきくなったらパイズリしたる」
「バカ。お前のおっぱいがでかくなるまえに俺のちんこがでかくなるだろ」

丸井の物言いにどきりとする。こんな会話で感じるようになったらもうだめた。好きになりすぎている。

「なあ、舐めていい?」
「はっ!?ばか、おしまい!閉店です!」
「もういっかいぐらいいけるじゃろ」
「も、マジで勘弁して。俺今日晩飯当番なんだよ。……あとほんともう、いっぱいいっぱいなんで許して」
「……気持ちよかった?」
「すげーよかった」
「じゃあ次の授業はまた明日」
「……無理」

 

 

*

 

 

「あ、そおー。童貞だったんだ」
「知らんかった?」
「興味ないもん」

さっくりと幼なじみを切って捨てた幸村の笑顔はすがすがしい。仁王には幼なじみはいないのでわからないが、そこまで無関心になれるものだろうか。幸村にとっては本当にただの専属シェフなのかもしれない。

「仁王、お昼ご飯は?」
「寝坊してコンビニ寄るん忘れた」
「夜更かし?」
「……なんかお預けにされた気分でムラムラしてのう……ついひとり遊びを」
「はいはい、昼時に下ネタはいいよ」

仁王にかまわず自分の弁当を開けた幸村を見る。こうして必要以上友人にからむことのない幸村は一緒にいて過ごしやすかった。
朝食も抜いたのでさすがにお腹は空いている。しかし一番人の多い時間に購買へ向かう気にはなれないから、時間をおいて行くことに決めた。

「わかんないなー。ブン太のどこがいいの?」
「そっくり返す」
「俺の赤也は従順でかわいいだろ?」
「あー、はいはい。……まだえっちはお預け?」
「当然」
「なあ、するとき見せて」
「はぁ?」
「邪魔せんから〜。俺ちょっと筆おろしはまりそう」
「やだよ、変態」

廊下から大きな笑い声が入ってきて、幸村の暴言は周囲には聞こえなかったようだ。最上級にいい笑顔だったなあ、思いながらなんとなしに廊下を見ると、友人と腹を抱えて笑っている声の主は丸井だ。こっちに気づいたときの笑顔に不覚にもときめかされる。今更純情ぶってどうしようというのだ。幸村が笑い飛ばすだけに決まっている。

「におー、お前飯食っちゃった?」
「まだ。買いそこねた」
「んじゃちょうどいいや。はいこれ、弁当。今日妹がいらねえの忘れて作っちまったから」
「え」

差し出されたのはバンダナに包まれた弁当だ。机に置かれたそれに教室が静まったことに、この男は気づかないのだろうか。バカなのかアホなのか考えながら丸井を見る。

「嫌いなもんあったら幸村に食わせとけ。んであとで教えろよ。お前幾ら何でも少食すぎるぜぃ、これぐらい全部食え」
「うん……」
「何?」
「……ええけど、普通逆やない?」
「お前に俺を越える弁当が作れるなら譲ってやるよ。弁当箱はげた箱にでもつっこんどいて、俺部活あるから」
「ん」
「……何しおらしくなってんの?何か悪いもん食った?」
「……耳貸して」

もう無理、だ。顔を寄せてくる丸井の男子にしては柔らかそうな頬に吸いついてやりたいと思いながら、なけなしの理性でこらえて耳打ちする。途端に飛び上がるように顔を上げた丸井は耳まで真っ赤で、バカだのアホだの言葉にならない罵倒を残して廊下に飛び出した。この仁王雅治も堕ちたものだ。

「なんて言ったの?」
「全部食べれたらご褒美におちんちんちょうだい、って」
「……バカ」
「やべー、ブン太がちんこにしか見えん」
「変なフィルターかかってるなあ……」

お昼に飛び込んだニュースでざわめきを取り戻した教室の喧騒をBGMに弁当を開けてみる。今度硬直したのは仁王の方で、俺それが嫌だから弁当は頼まないんだよね、と幸村の言葉が耳を滑った。

「……ブン太の妹って、いくつ?」
「中3」
「……は?」

いわゆるキャラ弁を前に怪訝な顔をしてみたが、それ以上アドバイスを出せる者は他にいなかった。パン類のくせに米で作られたヒーローの笑顔は嘲笑に見える。

「……わかった。俺このままあいつ捕まえといて、結婚するわ」
「子育て助かるだろうね」

背後に迫るクラスメイトに気づきながらもふたりで会話を続ける。別に隠すつもりがあったわけではないからかまわないが、丸井がまったく気にとめていないようなのが不思議だった。……もしかしたら、仁王の噂を知らないのかもしれない。

「に……仁王さん!」
「……何」

カニさんウインナーを眺めながら声だけ返す。幼少期にもタコさえ見たことなかったが、まさかこの年でカニを拝むとは。ミートボールにイカリング、ブロッコリーとプチトマトは幸村の弁当箱に転がす。

「仁王さんと丸井くんって、仲いいの?」
「丸井のこの弁当が嫌がらせのつもりじゃなかったらな」
「……つ……つき合ってるの?」
「……俺、大事にするって言われたん初めて」
「へえ、ブン太そんなこと言ったの?」
「かわいかったな〜……もっぺん筆おろししてやりたい。今度は無理やり奪っちゃる」
「下品」
「ブン太が恥ずかしがるならなんでもええ」
「う……嘘だっ、ありえない!」
「じゃあブン太に聞いてきたらどうじゃ」
「丸井くんGカップ以下は胸じゃないって言ってたからバストアップしてから告白って思ってたのに!」
「……Bで悪かったな」

あおったのば自分だがやはり煩わしく、携帯を取り出してシカトの体制に入った。携帯電話と一緒に錠剤が飛び出し、幸村が拾ってそれを見る。

「何の薬?」
「ピル」
「ああ」
「……飲むなって言われた」
「そうだね」
「もし俺が我慢できなくて生で突っ込んで中で出されちゃったらどうなるんかな」
「いい父親になるんじゃない?」

幸村は頼りになりそうでその実まったく役に立たない。参考にもならない返事に溜息をつき、薬をポケットにしまった。

 

 

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090213